今回も添乗は、近畿日本ツーリストの大柳春乃さんでした。さっとひと眺めで人数確認のできる小さなツアーは、私としては実に久しぶりの体験です。久しぶりと言えば、私は成田前泊も入れて7泊もする海外旅行はこの数年来体験したことがなく(このところヨーロッパもカナダも3泊のみでした)、まずは荷物の多さに驚きました。メンバーの皆さんはご夫婦のお荷物の他に車椅子があるわけですから、これはすごい旅行だと今さらながら感心いたしました。
JALの直行便に乗った一行は空路つつがなく旅をして、チューリヒに到着しました。夕方7時でも初夏のヨーロッパはまだ陽が高く、眠るには早いので一部の方たちと町に繰り出し、通りがかりの人に道を聞いたりしながら市内電車に乗ってチューリッヒ湖まで出かけてきました。
翌日はチューリヒの市内観光です。フラウミュンスター教会で見た、シャガール作のステンドグラスの青とオレンジの美しさを今でも思い出します。その後リフト付きバスは高速道路を快走して、首都ベルンへ。ツツジなどの咲くバラ公園を訪れて。湾曲するアーレ川に囲まれた世界遺産の旧市街を眺めているうちに雨模様となってきました。そのままインターラーケンへ移動しますが雨はますます激しく、トゥーン湖を通過する頃もホテルの最上階で行った夕食会の時も、あたりは霧や雲におおわれてまるで墨で描いた山水画のような眺めでした
翌朝、雲はますます深く景色も何も見えません。あんなに楽しみにしてきたのに、とお天気をうらみながらバスに乗り、グリンデルワルト(1057m)の登山電車の駅へ。さすがに日本人の団体客を多く見かけます。除々に高度を上げる登山電車の車窓からは、溶け残った雪と一緒に小さなクロッカスの群生が眺められて、少し気分も高揚してきました。そしてクライネ・シャイデック駅(2061m)で乗り換える頃には、待望の青空がわずかに見えて、一瞬ですがユングフラウとメンヒとアイガーのそびえ立つ姿を仰ぎ見ることができました。ワーと皆の口から思わず歓声が上がります。
その先はすぐに大トンネルとなり、電車はラックレールの軌道を踏みしめながらゆるゆるとアルプスの胎内を登っていきます。よくぞこのような鉄道を敷いたものです。そして終点のユングフラウヨッホ(3475m)となりました。そこにはアッと驚く景色が待ち受けていました。雲がいっせいに切れて、青空のもと見事なスイス・アルプスの雪景色が望まれたのです。遠くにはガイドに導かれながら登山をする人の姿が蟻んこのように見えます。
ここで気分の悪くなった方が出たので、SOS(医務室)へ駆け込みました。私も胸が苦しく、早めに下山しました。高山病ですね。
午後から穏やかな晴れとなり、車窓の景色もようやく絵葉書そのもののスイスの眺めとなりました。ゆるやかな牧草地のそこに建つシャレー(山小屋)や、集落の真ん中に高い塔をそびえ立たせた教会、しぶきをあげて流れ落ちる滝などが次々と目に飛び込んできて、頭の中はもう「スイス、スイス」の大合唱です。はるかかなたの切り立った断崖の上に作られた(ミューレン)には別なケーブルカーが通っているそうで、もっともっと訪ねてみたいと思いました。
これから先は快晴に次ぐ快晴でした。翌朝は時間があったので、ご希望の方とホテルから近いハルダークルムの展望台まで出かけました。頂上で足のご不自由なお父さんたちと私はケーブルカーの中で待っていることにして、遠くのユングフラウや足元のトゥーン湖やブリエンツ湖の絶景を眺めながら「オ・ブレネリ」やら「アルプス一万尺」やらざっと30曲ほど歌を歌って過ごしました。楽しいひと時でした。
午後はリフト付きバスでヤウン峠を越え、途中チーズで名高いグリュイエールを経由してからレマン湖畔のモントルーに出ました。そして再び山道に入り、ついにツェルマットの村に着きました。マッターホルンの峠がすぐ目の前に見えます。
旅は何日目になったのでしょうか?いよいよマッターホルンを見張らずゴルナーグラートの展望台(3131m)をめざす日となりました。その前に一部の方とご一緒に電気自動車のタクシーでウィンケルマッテンまで行き、そこからロープウェイでシュワルツゼーまで登ってきました。山道を少し歩きましたが、雄峰マッターホルンの山容を眼前に眺めながら行く散歩は、この上なく豪快で気持のいいものでした。
そしてゴルナーグラート展望台でついに、私たちの旅はクライマックスを迎えました。雄大な氷河やどこまでも連なる高い山々など、360°の風景の中で幸せでした。
旅の終わりはジュネーブ観光でした。レマン湖の噴水の見える美しい花の庭園で散歩を楽しんでおりましたら、通りがかりのおばぁちゃまが私たちの姿を見て「何と素晴らしいこと!」と感動の身ぶりをしておられました。本当に素晴らしい旅でした。
言語聴覚士 遠藤尚志
戻る
|